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中国における監査制度

中国の監査制度は、監査主体(監査証明をする者)の観点から、政府監査、内部監査、外部監査の3種類に分けられます。ここでは、日系企業に関係の深い外部監査、すなわち公認会計士監査(中国登録会計師による監査)を中心に解説します。

概要・ポイント

外部監査は、中国の法令に基づいて実施する「法定監査」と中国の法令とは関係なく会社の必要に応じて実施する「任意監査」とに分類されます。法定監査は監査証明資格を中国登録会計師に限定している点で、任意監査と異なっています。

法定監査
出資検証(験資証明)、会計監査(財務諸表監査)、税務監査、内部統制監査(C-SOX)、清算監査、等
任意監査
親会社の連結決算のための会計監査、J-SOXに基づく内部統制監査、特定項目の監査、等

出資検証(験資証明)

会社の設立手続のひとつである税務局及び財政局への登記にあたり必要となる出資の証明です。会社の定款の定めに従って、資本金として会社に払い込まれたことを証明するものです。よって、会社設立後に増資した場合にも必要となります。

会計監査(財務諸表監査)

董事会による配当決議の基礎資料となるほか、税務署・工商局などの共同年度検査にあたり必要となる監査証明です。中国では毎年1月から4月までが会計監査(財務諸表監査)のピークシーズンとなります。さらに春節(旧正月)休暇がピークシーズンに重なることから、監査報告書の入手時期については、親会社だけではなく会計師事務所等と綿密な打ち合わせが必要となります。

税務監査

北京・広州等の一部地域で要求されている税務申告目的の監査証明です。監査証明は年度の税務申告資料の一つとなります。

内部統制監査(C-SOX)

中国での上場企業に必要となる監査証明です。なお、日本での上場会社がJ-SOXの適用を受け、結果的に、その中国子会社がJ-SOXの対象子会社となることもありますが、通常は日系中国子会社がC-SOXの適用を受けることはありません。

清算監査

会社が消滅(清算・解散)するときに必要となる監査証明です。通常は、継続企業の終了時点での監査(純資産状況の監査)と残余財産の計算時点での監査(清算状況の監査)が必要となります。

任意監査

中国の法令ではなく、日本の法令や会社の内部規程等に基づく監査証明の総称です。具体的には以下のようなものがあります。

  • 親会社の連結決算のための会計監査(財務諸表監査)
  • 日本の連結監査を実施するに当たり、中国子会社の決算を特定の会計基準に基づいて行い、特定の監査基準に基づいた監査を実施する監査証明
  • J-SOXに基づく内部統制監査
  • J-SOXの適用により中国子会社がその対象となった場合の内部統制に係る監査証明

会計監査(財務諸表監査)の内容及びスケジュール

監査証明業務を効率的かつ効果的に実施するために、監査対象会社ごとにそれぞれの監査契約に対して監査計画を作成します。監査計画は、いつ、だれが、何を、どこで、どのように、という観点から作成され、この計画に基づいて、監査証明業務を実施します。

会計監査(財務諸表監査)における主な内容とスケジュールは以下の通りです。

監査計画の作成

監査契約の締結に合わせて監査計画を作成します。この計画により計算された作業工数を基礎として監査報酬が決定されます。

期中監査(事前監査)

毎年10月から12月にかけて実施されます。年度決算を行う前に会計上及び監査上の問題点を把握し、具体的な対策を打つことが主たる目的です。この結果、期末監査を効率的に実施することができます。

棚卸立会

会社が年度末に実施する実地棚卸に合わせて実施されます。製品、商品、原材料などを保管している店舗や倉庫にて実施されます。

債権債務及び取引高の確認状の発送

特定の基準日を定め、会社の主な取引先に対して、売掛金や買掛金、及び取引高の照合を行います。この基準日は、会社の状況に応じて決定されます。

期末監査

会社の決算作業終了後に、概ね1月から4月までの期間に実施されます。決算書の妥当性を検証する最も重要な作業となるため、決算作業の進捗を考慮して具体的な時期が決定されます。

監査報告書の発行

期末監査の現場作業終了後、約2週間をめどに決算書を添付した監査報告書が発行されます。

中国監査基準・監査に関する法令

監査基準

会計師事務所の品質管理、会計師監査業務及び保証業務等に関する規制である。

監査基準の性格

中国の監査基準は登録会計師協会が設定し,財政部の許可を得て公表されたもの(省令による部門法規)であり法的拘束力は強い。

これに対して日本の監査基準は、監査実務の中に慣習として発達したもののなかから一般妥当と認められたところを帰納要約した原則であって、職業的監査人は財務諸表の監査を行うに当たり、法令によって強制されなくとも常にこれを遵守しなければならないものである。

監査基準の体系

中国登録会計師保証業務准則を基本として、合計48か条の基準により構成されている。

中国登録会計師保証業務基本准則

  • 監査関連の基準
    • 監査基準
    • 監査レビュー基準
    • その他の保証業務基準
  • 財務情報に係る監査・レビュー以外の保証基準
  • 会計師事務所の品質管理基準

このほか、中国登録会計師協会が監査基準を詳細に解説し規範等を示した監査基準実務指針がある。

国際監査基準との相違点

中国の監査基準の体系は、国際監査基準の体系と形式的にはほぼ同等となっている。また、2006年に中国政府は、国際監査基準へのコンバージェンスが完了し、中国の監査基準は国際監査基準とほとんど一致していると発表した。

なお、国際監査基準と比較した場合、中国の監査環境を考慮して、下記の2つの基準が追加されている。

  • 監査人交代におけるコミュニケーション (第1152号)
  • 出資検証(験資証明) (第1602号)

日本の監査基準は国際監査基準と完全一致ではなく、共同監査に係る基準は日本の独特のものであるといえる。しかしながら、日本の監査基準は国際監査基準と大きな差異はないと判断されている。

中国監査実務の課題

2007年から国際監査基準に匹敵する監査基準が適用されているが、政府主導により短期間で監査基準を制定し適用した結果、企業、学者、会計師などの間での十分な議論が間に合っておらず、監査基準と監査実務の齟齬が危惧されている。この点については、会計基準についても同様の懸念がある。

また、監査資源には限界があるため、上場企業、国営企業、中小企業の如何を問わず、同一水準の監査手続を登録会計師が実施できていない可能性もある。

中国登録会計師協会がピュアレビューをおこなっており、いわゆるリスク・アプローチにもとづく監査は浸透されつつあると考えられる。しかしながら、監査を受ける会社自らも監査の信頼性を評価する必要がある。

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